「AIで作った資料だな」と経験者は一瞬でわかります。
生成AIの進化によって、情報収集や整理、資料作成は劇的に速くなりました。しかし現場では、「それっぽい資料」は増えたのに、意思決定や実行が前に進まないケースが後を絶ちません。本記事では、AIが得意なこと/苦手なことを整理したうえで、AI時代にこそ人間に求められる問題解決スキルとは何かを掘り下げます。
※ 本記事は、TriAsleadの「Our Perspective(思想)」の一部を切り取ったものです。
生成AIの進化によって、情報収集や整理、分析、資料作成のスピードは飛躍的に向上しました。適切に使えば、これまで数日かかっていた作業を、驚くほど短時間で完成することができることもあります。企業が「AIを使いこなせる人材」を求めるのは必然ではあります。一方で、現場では「情報はあり資料も整っているのに判断できない」「答えはあるが実行に移せない」といった状況が起きています。Triasleadは、このギャップの本質を、AIの限界ではなく人間側の問題解決スキルの在り方にあると考えています。
AIが得意なことは、問題解決の“前半”を加速すること
AIの強みは、問題解決の前半に集約されています。
- 大量の情報を高速に収集し、整理する
- 論点の候補を挙げ、たたき台を作る
- 壁打ち相手として自分の考えにフィードバックを提示する(ただし肯定的に寄りやすい)
つまり、思考の材料を揃え、スタート地点までの時間を短縮してくれます。ここにAIを使わない理由はありません。AIがあることで、問題解決のスピードは確実に上がります。ただし、問題解決が「速くなる」ことと「良くなる」ことは別です。AIが出すアウトプットの見た目が「それっぽく」整うほど、人間側が担うべき責任が重要になります。
なぜ「AIで作った資料」は意思決定に耐えないか
ここで言いたいのは「AIを使うべきではない」ということではありません。むしろ逆で、AIは積極的に使うべきです。ただし、AIが普及すればするほど、人間側の「問題解決の質」が露わになります。見抜かれるのはAIを使ったこと自体ではなく、意思決定に耐える条件が欠けていることです。
- 整理した“ように見える”が、意思決定に役立つ整理になっていない
大量の情報を汎用性の高いフレームワークに当てはめ、MECEっぽく並べている。しかし、なぜその切り口なのかが説明できず、結果として「この資料で何が言いたいのか(so what)」がわからない。意思決定者が見ているのは、MECEかどうか、綺麗に整理された資料かどうか、ではありません。限られた時間で判断できるように、課題・解決の選択肢・評価軸が“意思決定に資する形”で整理されているかです。
- 一部の誤りで、全体の信頼性が崩れる
AIが進化しつつあるとは言え、その情報収集・整理力には限界があります。情報が古い、事実と異なる、事実っぽく情報を作り上げてしまう、といった問題に直面したことがある人が多いのではないでしょうか。たとえ大半の情報が正しくても、誤りが一箇所あるだけで「検証されていない」と見なされ、資料全体の信頼性が損なわれ、意思決定者は聞く耳を持たなくなります。意思決定の場では、資料は“正しさ”だけでなく、検証と責任を伴う必要があります。
- 課題解決、意思決定に必要な文脈の理解が欠けている
解決すべき課題の背景には、業界特有の事情(慣習や規制環境など)、組織特有の事情(組織風土など)、課題解決に向けたこれまでの取り組みの経緯など、課題の背景にある文脈の理解がとても重要です。また意思決定の場においては、資料の整理やその位置付け、プレゼンテーションや議論の仕方などの「意思決定の作法」があります。またこの作法のあり方は、課題の内容、意思決定者によって異なることもあります。AIはどんなに学習させたとしても、こうした課題解決や意思決定に必要な文脈を完全に理解することは困難です。
AI時代の問題解決は「問い・検証・判断・実行」で決まる
この4点の考え方はOur Perspectiveで整理しています。
AIは強力な支援ツールですが、次の領域は完全に代替することができません。
- 良い問い(課題設定)を立てる
問いの精度が、問題解決の精度を決めます。上記の通り、課題の背景にある様々な文脈を理解した上で、解決すべき課題を具体的に定義し、解決のスコープや制約条件を明らかにし、課題解決後のあるべき姿と時間軸を具体的に示す必要があります。
- AIの出力を検証し、評価する
AIは初期的な情報収集や整理には役に経ちますが、その出力を批判的に評価できる力が不可欠です。情報の正確性や抜け漏れの確認のみならず、整理された情報が課題解決につながるような意味のある構造で整理されているかの確認が求められます。
- ストーリーで意思決定者の判断を促す
最終的に必要なのは、問題解決に向けた提案を、わかりやすいストーリーにまとめ効果的に伝えることで、意思決定者の判断を促すことです。ストーリー構成の基本形(背景、課題、解決策、実行計画がいわゆる「ピラミッドストラクチャー」で論理的に構成されている)に基づきながら、意思決定者の立ち位置、課題に関する理解や仮説、懸念点などを十分に考慮した内容にする必要があります。
- 人を動かし、実行につなげる
問題解決は、意思決定が最終ゴールではありません。具体的に解決策を実行に移し、期待された成果を創出することが求められます。解決策の実行には、その実行に関与する様々な人を動かす必要があります。紙に書いた提案書、実行計画書では人は動きません。もちろんAIも人を動かすことはできません。
問題解決スキルは座学だけでは身につかない
このようにAIが進化しつつある今こそ、人間側の問題解決スキルを高めることが重要となります。問題解決スキルのノウハウは書籍やセミナーでいくらでも学習することができます。しかしながら残念なことに、このスキルは「分かった」と思いこみやすく、一方で実践で応用するのが難しいものでもあります。スキルを習得し実践で効果的に応用できるような能力を身につけるために近道はなく、日々の業務において 実践的な課題に向き合い、試行錯誤を繰り返す、反復練習を地道に行うことが必要です。「ローマは1日にしてならず」。問題解決を「本業」とするコンサルタントでも一人前になるためには数年の試行錯誤と苦労を重ねた経験が求められます。
まとめ:AIがあるからこそ、問題解決スキルは「全員」に必要になる
AIが普及するほど、問題解決の質と実行力が企業競争力を左右します。だからこそ、AIを“使う側”の人間が、問いを立て、検証し、判断し、実行する力を磨く必要があります。
コンサルタント 堤 裕次郎
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本記事で述べた考え方は、Triasleadの「Our Perspective」として整理しています。
AI時代における問題解決スキルについて、より体系的にまとめています。


