Trusted Advisorとして、経営者であるクライアントのご支援の可能性を考える上で、常に6つの質問を自問自答もしくは直接、間接的にクライアントにお伺いするようにしています。これらの質問はコンサルタント目線で書いておりますが、クライアントがコンサルタントの起用を考える上でも同じように確認すべき重要な質問だと考えております。
1. クライアントが夜も眠れないくらいほど頭を悩ませている課題は何か?
Trusted Advisorとして経営者に大きな投資判断の是非を検討頂く状況を考えれば、クライアントにとって深刻な課題でなければそもそもコンサルタントの力を借りて解決しようとは思わないと考えるべき。もちろん夜も眠れないほど悩ましい課題でなかったとしてもコンサルタントの支援は必要なことも多々あるが、ここではあくまでも経営者に対して大きな投資を検討頂くことを想定
2. その課題は会社の企業価値に直接、間接的にどの程度インパクトを与えているか?
表層的な課題に対してコインの裏返しの解決策を提示しても、経営に与えるインパクトが不明瞭になるケースが多い。経営者が考える課題がどのように会社の企業価値(短期的・長期的な売上やコスト)に影響を及ぼしているのか、その深刻さが定量化できなければ、最後の質問6にあるコンサルタント支援の投資対効果を定量化できない
3. その課題を解決する方法をクライアントは理解しているか?
解決する方法を十分に理解していなければコンサルタント支援の価値がある可能性がある。コンサルタントとしてはクライアントが思いつかない解決方法や枠組み、ベンチマーク情報などが提案できれば価値の源泉となりうる。またクライアントが解決策を理解しているように見えても実は詳細までは理解が及ばない、または概念レベルで理解が止まり、経験に基づく洞察が足りない場合もあるので要注意。もし十分に理解していれば、コンサルタントの支援の必要性は次に続く質問への答え次第となる
4. その課題を解決するためにどのようなスキルとリソースが必要か理解しているか?そのようなリソースは社内に十分存在するか?
往々にして必要なスキルとリソースに対する理解が間違っていたり必要なリソースを過小見積もりしがち。またプロジェクトリーダー、メンバーが兼任で選出されるケースが多く、その場合はプロジェクトへのコミットメントが不十分であったり、「本業」に忙殺されるなどして、結果として期待される投入時間や生産性を担保できない可能性があるので注意が必要
5. 我々はコンサルタントとして必要なスキルとリソースを提供することが可能か?
自社のケイパビリティを過大評価していないか?必要な品質を担保できる自信があるか。類似した課題に関するプロジェクトの実績は十分にあるか。そうしたプロジェクトと今回の課題解決の類似点を理解し必要なスキルとリソースの調整ができるか。シンプルに、風呂敷を広げすぎていないか?
6. ご支援に必要なコンサルティング費用は投資対効果に見合うか?
プロジェクトを実施することで、質問2で特定した企業価値に与える定量的インパクトのどの程度に改善が見込めるか。またどのようような時間軸でその改善効果は創出されることが想定されるか。そうした期待改善効果を創出するために、コンサルタント費用は見合うか。数十倍のリターンが期待できるか(計算方法やクライアントの期待値次第でもあるが、この程度の規模間を常に目指す)
クライアントに対して「刺さる提案書」を作成する上での出発点は、これらの6つの質問に対して明確な回答を得ることです。そのためにはクライアントとの対話とそこから得られる洞察が大変重要となります。またクライアントにとってもコンサルタントの必要性、複数候補からの選定にあたっては、これらの6つの質問を念頭において頂くのが望ましいと考えます。
コンサルタント 堤 裕次郎